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第24回ポルデノーネ無声映画祭報告

2005/11/12 | filmpres | trackback

復元に話を移すと、東京国立近代美術館フィルムセンターの素晴らしい業績はもちろんのこと、ほかにも2件ほど注目に値するものがありました。

一つはエルンスト・ルビッチのお世辞にも傑作とは呼べない作品『ファラオの恋』(1921)のドイツにおける共同復元作業です。最高傑作ではないにしても、この作品には特筆すべき群衆シーンが含まれますし、さらに役者の並びも豪華で、エミール・ヤニングス、ハリー・リートケ、そして(信じられないような髪型で登場する)ポール・ヴェゲナーと、ドイツの三大スターが競演しています。このフィルムの再構成作業を担当したミュニッヒのアドラムとアルファオメガが好むのは、いわゆる「ビデオ・ルック」、つまりフラットで過度にクリーンかつ画面がまったく揺れない仕上がりです。DVD化すればおそらく見栄えがよくなるでしょう。

二つ目に気になったのは、染色や調色の復元にデジタル技術を使用するという試みです。従来の写真化学技術に比べてあまり良い結果が出ないと言われますが、この版は私の記憶にあるナイトレートのオリジナル・プリントにかなり近く、高い再現性が確認できました。『巨巌の彼方』に関しては、この映画祭が選んだ版がストレッチング(コマ伸ばし)の技術を使用した版であったこと、さらにヘンニ・ヴリエンテンによる音楽(生演奏ではなくて、録音)と共に上映されたことを記すに留めます。より幅広い観客を意識しているのであれば、この版は妥当な選択であるかと思います(90年代のハリウッドのサントラ盤のようなものです)。この作品の発掘と復元に関してはあらゆる考察が既になされているので、私からこれ以上何かを付け加える必要はないでしょう。

上映プログラム以外にも、この映画祭は若き情熱溢れる研究者のためのコレギウムを用意しています。映画祭のテーマに関して、専門家を集めてのディスカッションが一般の観客にも公開されているのですが、日本映画を扱ったものが二つありました。私はどうにかその一つに潜り込みました。常石史子、デイヴィッド・ボードウェル、デイヴィッド・ロビンソン(そして遅れて加わったらしいアレクサンダー・ジャコビー)が日本の無声映画の紹介をするというもので、パネリストらは「初心者」が日本映画に期待すべき事柄について解説を試みていました。ボードウェルは日本的要素と対立するものとして、衣服やジャズに見受けられる西欧からの影響の強まりについて言及しました。

私が面白いと思ったのは、弁士の組合の力が強かったことが日本の無声映画の歴史を他国より伸ばした一つの要因であるという事実です。これは後のナルド・リチーの講義でも裏付けられました。リチーによると、日本で最初に成功を収めたトーキー映画はジョセフ・フォン・スタンバーグの「モロッコ」だったそうです。また常石史子は、今回のプログラミングについても解説を加えました。近年新しく復元された作品、有名監督の作品と同時にあまり知られていない監督の作品についても、松竹の110周年を記念する作品や成瀬の生誕百年と同様に取り上げられました。

今年のジョナサン・デニス・メモリアル・レクチャーを担当したのはドナルド・リチーでした。期待通り、リチーは自身のキャリアを手短に語りつつも日本の映画監督に重点を置いて話を進めました。相似と相違を巡るとても感動的な講義であったと思います。1947年、オハイオ州から東京に移り住んだリチーによると、同じ世界でも二つの離れた土地での映画体験はまったく異なるものであったといいます。オハイオではスクリーンの中にいる人々と観客とに似ているところなどなかったのに、日本ではそれほどの違いを感じず、むしろ類似点のほうが顕著だったということです。

英国映画協会(BFI)のブライオニー・ディクソンのプレゼンテーションも、とても興味深いものでした。テーマは「ジョーイ・コレクション」というかなり特異なもので、これは1900年から1919年の間にジェシー・アベ・ジョセフ・ジョーイによって純粋に教育目的から構築されたコレクションのことです。1976年にBFI傘下の国立フィルム&TVアーカイヴ(NFTVA)の手に渡り、今日では1910年代のもっとも密度の濃いコレクションといわれています。ほとんどの作品が既に復元されていますが、残念なことに白黒のみの復元だったようです。多くのフィルムにステンシル・カラー、染色、調色あるいはその混合技術が施されているため、現在、色を復元するためのあらゆる努力がなされています。複数の映像アーカイヴ(例えばアメリカのジョージ・イーストマン・ハウスやイタリアのチネテカ・デル・フリウリなど)に収蔵されているダヴィデ・トゥルコーニのフィルム・フレーム・コレクションの復元とからめてデジタル化し、CD-Romにまとめる計画のようです。トゥルコーニといえば、ポルデノーネ無声映画祭の元ディレクターですが、彼はもっとも早い時期にジョーイ・コレクションへのアクセスを許された一人で、彼のフレームの多くはここから抜き取られたものです。双方のコレクションを照合することで、コレクションがより克明に解析されるだけでなく、個々の題名の判別にもつながると考えられます。

ジャン・ミトリ賞はアンリ・ブスケとユーリ・ツヴィアンに贈られました。彼らの仕事ぶりを知っていれば、この受賞は当然の結果といえるでしょう。

今年は音楽的にとても充実したポルデノーネ無声映画祭であったので、個人的にはそのことにとても満足しています。すべての演奏を堪能しましたし、それぞれ上映された映画ともぴったり合っていました。総括してみると、この映画祭には1920-30年代のフランスと日本という二つのまったく異なる世界の見方を教わりました。いつものことながら、近い将来、両国の文化や伝統をもっと深く理解したいという思いが私の中に沸きがっています。

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