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NFC岡田秀則研究員に聞く「アーキヴィストの仕事」

2002/9/4 | admin | trackback

国際フィルム・アーカイヴ連盟(FIAF)に加盟している日本のアーカイヴは現在のところ、東京の国立近代美術館フィルムセンターのみで(後記:2004年には福岡市総合図書館フィルム・ライブラリーが加盟)、世界的にはあまり知られていないものの、マニアックな作品が比較的安価で観られる上映機関として都内近郊には足繁く通いつめている映画ファンも多いことと思います。しかしアーカイヴの役割は映画上映だけではなく、フィルムの収集・保存・復元と多岐に渡ります。フィルムセンター研究員のお一人である岡田秀則氏に、アーキヴィストという職業について、また映画保存についてお聞きしました。

1.フィルム・アーキヴィストになるまで

今日は「アーキヴィスト」という職業について岡田さんにお伺いしたいと思っています。

僕はフィルムセンター(以下FC)に入るとき、「アーキヴィストになろう」と思っていたわけでは全然ないんです。

そうなんですか?

そもそもフィルム・アーキヴィストという仕事を知らなかったし、なろうと思ってもなれる場所は日本にはないじゃないですか。もともと僕は、強いていえばまず映画の上映企画をやりたかったので、FCに入って初めてアーキヴィストという仕事の重要性に気付きました。日本では今でも映画というのは「観ること」と「評論」に始まって終わるわけで、「物理的にフィルムをどうするか」に気付くのは技術者とかごく一部の人々に限られているでしょう。

FC以外の職場で映画の仕事をしたいとお考えになったことはないですか? 例えば学生時代に……。

岡田秀則研究員あったとすればものを書く仕事でしょうか。でも僕にはそんな才能はないので、せめて企画に少しでも関われるかと思って国際交流基金というところに入ったんです。そこには5年8か月いて、最後の2年近くは日本映画を海外に紹介する仕事をしたのだけど、どこか煮え切らないと感じて、もっと深入りしたいと思うようになりました。それなりに楽しくて意義ある仕事ではあったし、その職場では「映画に詳しい人」といわれたけれど、それでは満足できなくて。

そこまで映画にのめりこむきっかけはいったい何だったのでしょう?

大学に入っていろんな「芸術」にバランスよく触れたいと思っていたけれど、気付いたら映画ばかり観ていたので、だからまあ、体がそういうことになっていたんでしょう。

でも、僕と同世代かそれより少し上の人には凄く多いと思うけど、蓮實重彦さん(映画評論家・元東京大学総長)の批評に大きなショックを受けたことは確かです。大学でも担当教官でした。彼は当時既に有名だったけれど普通の教授という立場だったから、まだ授業で直接やりとりができるような時代でした。学生と蓮實さんとの間に対抗関係のようなものがあって面白かったんですよ。彼の知らない凄い映画について言及すると、ムッとして「その映画はどこで観たのですか!?」なんてこともありました。

卒論はジャン・ルノワールで書かれたとか。

恥ずかしい過去ですが。仏語の学科だったのでフランスのことで書かなければいけないのです。もともとフランス映画は好きだったし、こだわりをもって観ていましたが、中でもジャン・ルノワールはさすがに圧倒的だと思ったからテーマにしました。でも就職するときは、もうこれで映画は趣味なのだと割り切ったつもりだったんです。趣味の範囲でものを書くことがあっても、それを職業にすることは一生ないし、できないだろうと。ところがどういうわけかFCに入って結局書くことになった。

「アーキヴィスト」としての自分を意識し始めて何か変化はありましたか?

意識してるのかなあ。まず日本にフィルム・アーカイヴの思想やその面白さを紹介してきたのは唯一人、岡島さん(FCの主任研究官である岡島尚志さん)なんです。岡島さんが一人で学んで日本の映画業界に一つの思想を植え付けようと文章を書いていらっしゃる。その闘いは、結局どちらから見ても不可欠なのです。「守ればいいと思っている」などという誤解もあるけれど、「守ったから、今映画が観られる」ということが人々の中で具体的な像を結んでいないからでしょう。個人的な視点だけでは済まない問題もたくさんあるわけですから。

2.フィルム・アーキヴィストとは

このサイトを読んでいる方にとってはまずフィルム・アーキヴィストって何? というレベルの疑問があると思うのですが。

まず、映画は「モノ」だということでしょう。いかなる芸術も物質的なものに依存しているわけで、映画もそうであるということに気付いたときに考えが変わってきますよね。誰しも映画が好きだ、というところからスタートするけれど、その後興味が「映画の図書館学」や「映画の保存科学」といったマテリアリスティックなものに向かうこともあるでしょう。ただその為に要求される作業の地道さとか技能というものは今の日本で普通に映画を観ている人からは敬遠されがちで、それは不幸なことだと思います。その面白さを伝えてくれる人も少ないですしね。

ではアーキヴィストってどんな人を指すのでしょう?

映画研究者の中でも、例えば精密なフィルモグラフィーをガチガチと作っちゃう人っているじゃないですか。そういう人はやっぱりアーキヴィストとしての素質があるんだなと思います。僕なんかよりずっと。

職業としてのアーキヴィストって日本では成立するのでしょうか?

FCでやっと成立するかどうか、というところでしょう。でも、例えば京都文化博物館 の「伊藤大輔文庫」のような重要なコレクションが出現して、それをカタログ化する必要性に気付いたときに、あるいはフィルム・コレクターのお宅に積んである膨大なフィルムを目にして「これはどうにかしなくては!」と思ったら、その瞬間にその人はもうアーキヴィストなんですよ。

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映画保存協会(FPS)は、映画フィルムを文化財として保存する活動に取り組んでいるNPO=特定非営利活動法人です。

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