ボランティア・プロジェクト:タイ国立フィルム・アーカイヴにて
2005/11/10 | admin | trackback5週目:6月6日〜10日
コダクロームがいっぱい詰まった箱がシロアリの被害を受けたとドーム・スックウォンが教えてくれました。中には失われたとされている1964年の作品「NOKNOI(Little Bird)」も含まれているとか。ミット・チャイバンチャーとペッチャラー・チャオワラートという、恋人役で人気を博した、いわばタイ映画史上最も有名なカップルが出演している作品です。実はタイ映画史上、1947年から1972年にかけてては「16mmの時代」と呼ばれています。ほとんどの作品は16mmリバーサルで撮影され、コストを抑えるため後で音声が加えられました。ですから生き残っている素材はすべてサイレントなのです。
状態の異なる92本のフィルムのうち、19本は劣化がかなり進行しているようでした。59本は外から見た限りはきれいでしたが、残りの14本は箱すらなく、裸の状態でした。これらのフィルムにインスペクションを施しては、新しいケースへと入れ替えていきました。クリーニングの方法は色々と試して、なんとかシロアリ被害の跡を消そうとしましたが、うまくいきませんでした。夜になってさらに調査を続け、結局シロアリの被害には打つ手がないとあきらめ、もっともひどい部分を切断して別の缶に保管することにしました。どうにか見られる部分だけでもDVD変換し、閲覧できるようにするためです。
6週目:6月13日〜17日
この週も手つかずのフィルムのインスペクションを続けました。その後、ホームムービーのコレクションを調査しました。もう誰も私にフィルムを運んでくることはなかったので、自分にできる仕事を可能な限り進めていこうと頑張りました。とはいえ、言葉の壁は悩ましいものです。フィルム缶のフタに処方箋を記したメモを残しても、言語が理解できなければ何も伝わりません。問題点は山積していて、その上、急を要するものばかりなので、優先順位を付けようもないのです。来年こそはリスク・アセスメントにも取り組もうと考えています。そうすることでNFAのスタッフが、もっと効率的に仕事をこなすことができるようになると思うからです。
7週目:6月20〜24日
有名なタイの歌手、クリスティーナ・アキラーのホームムービーのインスペクション、クリーニング、缶の入れ替えをしました。それからワークショップの準備もこなしました。
6月22日、「NFAに救済の手を」と題して開かれた記者会見に参加しました。
トムソン・サービスに買収されたタイ最大のフィルム現像所は、今日ではテクニカラー傘下となっています(テクニカラー・タイランド)。経営責任者であるポール・スタンバーが映画保存や復元に情熱を傾けていることはよく知られています。テクニカラーは特別なプロジェクトを立ち上げ、タイのフィルム・アーカイヴのスポンサーに名乗りを上げました。これから毎年2本のアーカイヴ所蔵作品について、復元作業をおこなうそうです。アーカイヴの現像所は白黒フィルムしか扱えないわけですから、この協力関係はひじょうに重要な意味を持ちます。この発表と宣伝を兼ねて記者会見が開かれたわけですが、詳しくは、以下の新聞記事を参照してください。
Bangkok Post (www.bangkokpost.net) 2005.06.23: First two films chosen for restoration
The Nation (www.nationmultimedia.com) 2005.06.24: Technicolour to the rescue of old movies
(映画保存ニュース・アーカイヴ 2005年6月23日、6月24日付データ)
週末(25、26日)のワークショップ:視聴覚アーカイヴの基礎知識
初日の参加者は14名でした。まずは上映時間10分の「復元」されたタイ映画「THE BANDIT」(「怪盗ブラック・タイガー」のモデルになった作品)のVCDを鑑賞しました。主演はまたしてもミット・チャイバンチャーです。「復元版」と言う言葉がパッケージに使われています。しかしこれは傷んでいる上に退色したプリントから変換して、新たに音楽を加えたものです。私は参加者に、このプリントの持つ問題点を書き出すよう指示しました。それからもう一度同じ作品をみて、問題点について話し合いました。続いて映像アーカイヴの歴史を大まかに教えました。各国の例を出したり、代表的なアーカイヴの名前や、国際アーカイヴ連盟(FIAF)、東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイヴ連合(SEAPAVAA)、映像アーキヴィスト協会(AMIA)といった団体の名前も挙げたりしました。国による映画保存活動の違いや、文化遺産として映像を守ることの大切さなども話題にしました。後になってわかったことですが、こういった事柄について考えること自体、タイ国内では比較的新しい試みだったようです。その次に、視聴覚アーカイヴが扱う様々な仕事の領域、職種、責務等についても話しました。ドーム・スックウォンが参加者にアーカイヴの内部を見せてまわりました。見学の後で、今度は倫理的な話題に移りました。ここで本格的な討論が可能になったのは、通訳を引き受けてくれたタイ・フィルム・ファウンデーションのチャリダー・ウアバムルンジットのおかげです。彼女が私の話にタイでの事例をたくさん追加してくれました。考え方がまったく異なることから、いくつかのテーマはとても複雑な議論に発展しました。例えば、各自の嗜好が対立し合うというような問題ですすが、これはタイの言語には置き換えようがない概念のようでした。タイの人たちが仕事と家庭を分けて考えられないのと同じように、ヨーロッパとは何かが根本的に違うのかもしれません。2日目の午後はフィルムとマグテープを実際に扱ってみました。時間とスペースの不足から、デモンストレーションだけになってしまいましたが、結果としてほとんどすべての参加者が、ボランティアとしてNFAで働いてみたいと心を決めてくれたようです。翌週から働き始めたいと、早速予約を入れた参加者も2名いました。このようなワークショップが、今後毎年開かれるということも決まりました。残念ながらアーカイヴのスタッフは、このワークショップには興味を示してくれませんでしたし、PRDアーカイヴ&博物館部門の面々もそれは同様で、この週末、彼らは職員旅行に出かけてしまいました。
8週目:6月27日〜7月1日
ワークショップの参加者から、さらに3名が研修生としてNFAに加わりました。フィルムの扱いの基礎からはじめて、ドーム・スックウォンはカタロギングとフィルムの登録方法についても彼らに教えました。カタロギングの分野でもNFAはかなりの遅れをとっています。
残りの2日間は片付けや掃除に終始し、さよならパーティーでは豪華な料理が供されました。

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