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[復元報告]特急三百哩 よみがえった幻の鉄道映画

2004/9/18 | filmpres | trackback

『特急三百哩』復元プロジェクト

瀕死の状態で発見された『特急三百哩』が命を吹き返すまでの一連の救出作業において、私たちの果たした役割はおもに三つあります。

フィルムの補修と調査

まず一つは、復元が正式に決定するまでの間の応急処置でした。

私たちは2001年、プラネット映画資料図書館(大阪)の所蔵フィルムを対象に、試験的な調査プロジェクトを開始しました。具体的には、フィルムの状態チェック、缶の入れかえ、所蔵番号や倉庫番号の設定、ラベルはり、データベースの構築などを実際におこないながら、一定量のフィルム調査に必要な時間とコストを割り出し、そのほかのフィルム・コレクションにも広く適用できる「マニュアル」を作成したのです。このプロジェクトは2004年まで続き、合計で100巻程度のフィルムを扱いました。この中から後に復元され、国立近代美術館フィルムセンターやプチョン国際ファンタスティック映画祭で上映された作品もあり、プロジェクトの成果は、私たちのサポート会員による “Planetary Film Archives”(プラネット所蔵フィルムのアーカイヴ化活動)に引継がれました。

300mile01.gif『特急三百哩』も元はと言えば、このプロジェクトで扱った作品です。シナリオが残されておらず内容は不明でしたが、戦前の日活製作で、しかも完全版である可能性も高かったことから、すぐにも復元されるべき作品と判断し、作業にかかりました。まずは錆びついた缶を新しくし、正しい巻数順に並べ替え、フィルム表面の汚れを丁寧に拭き取り、激しく劣化して固まっていた部分を数日間かけて丁寧に剥がしました。続いて、挿入字幕のすべてをルーペで読み取ってデータ化し、テレシネ(ビデオ変換)機にかけられる程度に破損箇所を補修しました。

歴史的価値が明らかに

作品の全貌があきらかになるにつれ、梅小路機関車庫を舞台とし、当時の鉄道省の後援によって製作された”鉄道映画”としての価値も次第に明らかになっていきました。

300mile04.gifその事実を裏付けてくださった映画史家/SL評論家である畑暉男氏には、主演の島耕二が語る撮影時の思い出や、プロデューサー的な役目を果たした村尾薫(製作当時、鉄道省嘱託)による批評など、貴重な文献資料を提供していただきました。京都映画祭への出品を前提とした復元作業の実現を期待しつつ、収集した資料と挿入字幕の抜き書きを大阪芸術大学教授/京都映画祭実行委員の太田米男氏にお渡ししたのは2002年のことでした。いったんは財政難により中止に追い込まれた京都映画祭ですが、2004年には復活開催が決定し、『特急三百哩』はその晴れの場で、オープニング作品として上映されることになりました。復元作業は太田米男氏の監修のもとIMAGICAウェストにておこなわれました。発見されたオリジナル・プリントの状態でとりわけ目を引いたのは、部分的なピンクの染色が美しく残されていたことですが、残念ながら、この染色情報は復元版には生かされませんでした。部分染色の再現は、技術的にも予算的にもハードルが高いようです。

公開に向けての広報活動

復元版の公開に向けて、私たちが果たした二つ目の役割は、主要な鉄道専門誌や新聞社に向けての広報活動でした。

「鉄道ファン」編集長の宮田寛之氏の力添えもあり、ほとんどの鉄道専門誌には上映についての告知が掲載され、さらには、毎日新聞でも復元にいたる経緯が大きく取り上げられました。オープニング上映で映写を担当されたのは田井利夫さん。田井氏ご自身の手による改造映写機で、適切な映写スピード(18fps)が実現しました。国内の映画祭において、映画の復元にここまでスポットがあてられるということは、これまでになかったことではないでしょうか。観客数は1500名を超え、オープニング上映は大成功に終わりました。その後「特急三百哩」の復元プリントはプラネット映画資料図書館に所蔵され、以来、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー金曜上映会などにも貸し出されています。

プラネット映画資料図書館によるオリジナル・プリントの保存、私たちによるフィルム調査プロジェクト、畑氏の鉄道映画への情熱、そして京都映画祭というお披露目の場、、、様々な条件が、まるで飛び石があらわれるようにうまく連らなって、このフィルムは無事、スクリーンに蘇りました。それらの条件の一つが欠けても、復元は手遅れになっていたかもしれません。オリジナル・プリントの劣化は2001年の段階で既にはじまっていたのです。多くの方に復元されたフィルムをみて楽しんでいただくという喜びは何ものにもかえがたく、その後の私たちの活動の原動力ともなっています。

海外上映の夢

最後に、私たちの果たした三つ目の役割として、挿入字幕の英訳作業があります。英語版が製作されれば海外での上映も夢ではありません。今後は「特急三百哩」の国際舞台への展開にも期待したいところです。

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