はじめて物語番外編 「映画の里親」
2007/3/2 | nakagawa | trackback図書館に行こう
F:調べものなら任せてください。
P:おや、自信がありそうですね。
F:ふふ。インターネットを利用すれば簡単ですよ。ほら、「日本映画データベース」というサイトで……
P:検索すれば公開年月日や主な出演者などがわかりますね。でもFくん、インターネットに頼り過ぎるのはいけません。私が学んだ映画保存学校では、インターネットから得た情報をデータベースに使用するとこっぴどく叱られました。
F:ええ~。どうしてですか?
P:ネット上のURLはいつ削除されるかわからない不確かなものです。便利なところは最大限に利用するべきだけれど、それだけではなくて、なるべく一次情報にあたるよう心がけてください。公開年月日がわかれば、当時の「キネマ旬報」を捲ってみてはどうでしょう。公開された当時の批評や作品紹介を読むことができるし、同時期にどのような作品が話題になっていたかもわかって面白いですよ。
F:古い文献は図書館に行けばみつかるの?
P:東京だったら早稲田大学の演劇博物館というところがダントツですごいのだそうです。古い映画の文献など、何でもそろっているという噂ですよ。早稲田大学の学生じゃなくても誰でも利用できるそうだから、F君も一度のぞいてみては?ほかにも映画専門の図書館(S1)が何カ所かあります。フィルムはなくても台本やスチル写真、それにポスターが所蔵されていることがあって、とても参考になりますよ。
F:そんな珍しい文献をそろえた専門の図書館があるなんて、心強いですね。ちょっと近寄りがたいような気もするけれど、一度行ってみようかなあ。
P:それから……実は、FPSのこの事務所も映画保存資料室を兼ねているんです。過去の活動記録も色々おみせできます。
F:あ、ということは「モダン怪談」を復元したときの資料もそろっているんですね。ほかに調査段階で気をつけることってありますか?
P:パブリックドメイン(S2)であるかどうかも確認したほうがいいでしょう。その作品の権利を持っている人がいたら、許可なく復元したり上映したりすることはできません。それから、その作品が復元されるに値する作品であるという裏付けも必要です。ただ面白いから、自分が好きな作品だから、古い映画だから、といった理由だけでは説得力に欠けますよね。
F:やっぱりマニアが唸るような珍しい作品じゃないと救われないんでしょうか。
P:残念ながら、現実にはそのような側面もあります。もっともFPSは内容に関わらずいかなるフィルムも大切に守られるべきだと考えています。むしろ地域に根ざしたフィルム、小型映画などを守ることが私たちの活動の中心なんですけれど、そのようなことはいくら頑張っても、なかなか世間の注目を集めることがありません。でも、劇映画の珍しい作品が発掘されると、新聞や雑誌もそのことを取り上げてくれるんです。最初は物珍しさからでもいいので、いずれ私たちが本来目指していることが伝わればいいなあ、と思っています。
F:そうなんですね……でもどちらの仕事もやりがいがありそうですね。
P:もちろんです。さて、作品のことが少しわかってきたら、次のステップに進みましょう。
メモ
S1:松竹の大谷図書館、東京国立近代美術館フィルムセンター図書室などがあります。川喜多記念映画文化財団にも膨大な映画資料が所蔵されています。
S2:映画の著作権は公表後70年が保護期間と定められています。つまり、ほとんどのサイレント映画は著作権が消滅しているといえます。
