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はじめて物語番外編 「映画の里親」

2007/3/2 | nakagawa | trackback

フィルム・インスペクションからはじめよう

:「七つ道具」はこの事務所の中にすべて揃っています。では、インスペクションとは何かについてざっと説明しておきましょう。

:待ってました!

:たとえ缶や箱に題名が書いてあっても、中身はまったく別の映画、なんてことがよくあるんです。題名が出てきても、後ですり替えられたものであったり……フィルムのはじまりとおわりはもっとも傷む部分だから、失われていることも多く、意図的な改題とか検閲なども時にはあります。何度もリメイクされている作品もありますし。

:例えば?

:例えば日本人が大好きな「忠臣蔵」とか「宮本武蔵」といった物語は、これまで何度映画化されたことかわかりません。どこかに題名が記してあっても、インスペクションを終えて中身を確認するまでは、早とちりしないように注意してくださいね。題名などの文字情報がまったくない場合は、役者さんの顔とか、ときにはフィルムの製造番号などから推理していくことになります。そういったややこしい作業には映画史や映画技術史の知識も欠かせません。

:なかなか奥深い作業なんですね。

PSAN3.gif:あとは臭いも重要です。はじめに鼻を近づけてかいでみましょう。体にはあまりよくない成分らしいので、作業中はマスクや手袋の着用をお忘れなく。

:え、危険なんですか。

:フィルムにもよります。そんな難しいフィルムばかりとは限りませんよ。

:もしすごく汚かったり、ひどく劣化していたりしたら、どうするんですか?

:フィルムにカビや汚れがあれば、フィルム・クリーナーを大判のガーゼに含ませて表面を拭き取ってみましょう。屋外に長期間放置されていたようなものでない限り、きれいになります。ただ、劣化が進行しているとフィルム自体が脆くなるので、決して無理はせず、状態がひどいときは現像所に任せましょう。

:とくに問題がなかったら?

:手動の巻き取りにセットして、ゆっくり慎重に巻き取りながら中身を調べていきます。ルーペを使えばたいていの文字情報は読みとることができます。古いフィルムの場合は繊維がひっかかることもあるので、手袋を着用するより素手のほうがやりやすい場合もあります。フィルムのエッジをはさむようにして持つのがコツですが、指紋などは万一付いても、あとできれいに落とすことができますから、とにかく傷や折り目をつけたり、フィルムを裂いてしまったりしないよう注意しましょう。そういったダメージは、取り返しがつきません。復元するにしても、デジタル技術でも使わない限りどうすることもできません。

:なるほど。こうやってクランクを一定の速度でまわすんですね。FKUN3.gif

:そう。ここでわかることは、形状、コアの有無、カビの発生、錆の転移、リールの歪み、だいたい何フィートくらいの長さで、上映時間は何分程度なのか……そのようなことです。

:ちょ、ちょっと待って!そんなにたくさんあるんですか。メモをとらなくちゃ。

:ぜんぶ覚えなくても大丈夫。インスペクション用のマニュアルも用意しているし、専用の調査カードやチャートがあるので、確認しつつ埋めていってください。復元するまで上映はしないのだから、余計な補修は加えなくてもいいんです。でも傷の入り方などをこの段階でよく観察しておくと、あとで参考になります。ネガかポジか、サイレントかトーキーか、カラーかモノクロかも、慣れてくるとすぐにわかるようになります。カウンターを設置して、正確な長さを測ってもいいでしょう。

:ふう。残存する唯一のプリントとなると、緊張するだろうなあ。

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映画保存協会(FPS)は、映画フィルムを文化財として保存する活動に取り組んでいるNPO=特定非営利活動法人です。

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