増幅する『メトロポリス』に関するノート
2006/9/7 | admin | trackback『メトロポリス』(1927)は人気がある。ドイツの無声映画、SF映画、あるいは映画装置といったテーマ(他の数多くのテーマについてもそうだろう)の回顧上映会が、このフィルムなしに開かれるというのは考えがたい。多くのひとが、なんらかの機会に『メトロポリス』と呼ばれる作品を観ていることだろう。だが、彼らが観たものはなんなのか? それは、1924年にテア・フォン・ハルボウによって脚本が執筆され、1925/1926年にフリッツ・ラングによって監督された映画ではない。そのオリジナルは1927年の4月に失われてしまったのだ。『メトロポリス』の題で配給会社やアーカイヴによって提供され、ビデオとして販売され、時にはテレビで放映される作品は、ある時はより多く短縮され、ある時はより少なく短縮されたオリジナルとは異なる様々な別ヴァージョンにほかならない。
2001年2月15日、ベルリン国際映画祭で、新たに復元された『メトロポリス』が上映された。それ以降、この復元版は世界を巡回している。F. W. ムルナウ財団の委任によるこの新しいヴァージョンは、ブンデスアルヒーフ=フィルムアルヒーフ、ミュンヘン映画博物館、それにヴィースバーデンのドイツ映画研究所のアーキヴィストたちの共同の努力の結果復元された(F. W. ムルナウ財団は、『メトロポリス』を含む1945年以前に制作されたほとんど全てのドイツ映画の著作権を持つ公的な組織)。著者は当初、現存するフィルム断片の調査に携わり、その後、F. W. ムルナウ財団によって実際の復元過程への協力と監修のために雇われた。まだこの計画が続けられていた間に、私は初期の発見を”Metropolis: A Cinematic Laboratory of Modern Archtecturel”*1という本の中で発表した。このエッセイは、メトロポリスがいかに破壊され、その後数十年間にわたって再構成され復元されてきたのかを概観しようとした試みを改訂したものだ。とりわけ私は、このプロジェクトのためにエンノ・パタラス*2がこの映画に関する知識を貸してくれたことに対して感謝したい。エンノ・パタラスは、ミュンヘン映画美術館のディレクター時代に彼自身の行った『メトロポリス』の復元に多大な努力をそそいだ。それだけでなく、彼は自身の記録をこのフィルムについての文書としてまとめており、そのある部分は次世代バージョンの構造の基礎となった。彼の記録はそれ自身独立した本としてドイツ語で出版されている。この本はシーンに基礎を置いた観点から、このフィルムの「形態」に何が起こったのかを理解させてくれた。そこから同時に、何を復元することができ、何が復元できなかったのかについての深い洞察を与えてくれた。*3 しかしここで私が行うのは、この歴史上最も有名な無声映画の拡散についての見解を示すことだ。それはこの映画の辿った物語が決して特殊なものではなかったことを確認しながらなされるだろう。私たちが現在上映される形を当然のものとして受け入れている多くの古典映画は、これと似た運命を辿っている。『メトロポリス』を特別な存在にしているのはオリジナルの形態について残された資料の多さであり、それが「本当のヴァージョン」を調査し、現存する断片を使いそのある程度を最良の質のプリントで復元することを可能にしてくれた。
筆者:マーティン・ケルバー Prof. Martin Koerber M. A.
1988年以来「日曜の人々(Menschen am Sonntag)」、「M」、「ドクトル・マブセ」、「アスファルト」、そして「メトロポリス」を含む数々のドイツ古典映画の復元を監修している。ドイツ映画博物館、オランダ映画博物館などを経て、現在はベルリン工科経済大学(Fachhochschule fur Technik und Wirtschaft)教授。(翻訳・矢田聡)
(オリジナル記事(英文)はアルファ・オメガに掲載されています。)
- [原]Wolfgang Jacobsen, Werner Sudendorf, ed., Metropolis, A Cinematic Laboratory of Modern Architecture (Stuttgart/London: Edition Axel Menges, 2000).※以下、原注は[原]、訳注は[訳]で示す。 [back]
- [訳](1929〜)マスメディア学とドイツ文学をミュンスターで学ぶ。57年に”Filmkritik”を創刊し、70年までこの映画雑誌の編集を務めた。73年から94年の間にミュンヘン映画博物館のディレクターとして行ったエルンスト・ルビッチやフリッツ・ラング等の古典映画の復元は世界の注目を集めた。 [back]
- [原]This publication gives a much more detailed picture than I can do here. Readers of German are referred to Enno Patalas, Metropolis in/aus Truemmern (Berlin: Bertz Verlag, 2001). [back]
